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大阪高等裁判所 平成8年(ラ)976号 決定 1997年6月19日

主文

一  原決定を次のとおり変更する。

二  抗告人、相手方乙山、相手方丁原の間において、相手方丙川の有した別紙物件目録記載(一)の土地の借地権を、そのうち同目録記載(二)1の土地部分についての借地権を抗告人に、同目録記載(二)2の土地部分についての借地権を相手方乙山に、それぞれ割り当てる。

三  抗告人が、別紙物件目録記載(二)1の土地について、堅固建物以外の建物の所有を目的とする賃借権を有することを確認する。

四  相手方乙山が、別紙物件目録記載(二)2の土地について、堅固建物以外の建物の所有を目的とする賃借権を有することを確認する。

五  相手方丙川から抗告人への第三項記載の土地についての借地権譲渡の対価額を金一三八三万七〇〇〇円と定める。

六  相手方丙川から相手方乙山への第四項記載の土地についての借地権譲渡の対価額を金三〇〇八万九〇〇〇円と定める。

理由

一  当事者の求めた裁判及び主張

本件即時抗告の趣旨及び理由は、別紙抗告状、抗告理由補充書及び平成九年二月一三日付準備書面(各写し)に、相手方乙山及び同丁原の反論は、別紙平成九年二月一三日付準備書面(写し)にそれぞれ記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

当裁判所は、罹災法三条、一六条に基づく借地権の譲渡、借地権割当及び借地権の譲渡対価額については、本決定主文第二項ないし第六項のとおりとするべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正等するほかは原決定の理由中「第二 事案の概要」及び「第三 当裁判所の判断」欄の各一ないし三に示されているとおりである。

【原決定の訂正等】

1  七頁一行目の「別紙物件目録三記載の建物」を「原決定別紙物件目録記載三の建物」と、一二頁七行目から八行目にかけての「求められるから」を「認められるから」と、一三頁一行目の「別紙見取図」を「本決定別紙見取図」と、一五頁七行目の「甲田町商店街」を「甲田本通商店街」と各改め、同一一行目の「判決」の次に「・民集四三巻八号九五五頁」を加え、一七頁三行目の「二体一」を「二対一」と、同四行目の「右認めた」を「右に認めた」と各改める。

2  一八頁二行目冒頭から末行末尾までを次のとおりに改める。

「しかるところ、抗告人に割り当てられる間口部分(西側公道に面する部分)には、甲田本通商店街のアーケードの柱(幅約三〇センチメートル)が存在するため、抗告人に対して従前同様の建物間口が確保可能な借地間口、すなわち従前の壁芯間口二・九五メートルに南北の壁芯後退各〇・二五メートルを加算した借地間口三・四五メートルを割り当てても、抗告人が店舗を建築する(特に、従前の店舗のように公道側に全面的に開口部を取る形の店舗を建築する)場合、店舗の間口の内側に右アーケード柱が位置することになり、これが抗告人の営業上一定の障害となる恐れがあることは否定できない。ちなみに、従前は、阪神・淡路大震災で滅失した本件建物が本件土地の南側(コープ甲田側)の境界線から後退して建てられていたため、右アーケード柱が抗告人の店舗の間口の内側に位置することはなく、それが抗告人の営業上の障害になることはなかった。しかも、右アーケードは、昭和三九年ころに建築され、昭和五九年と平成七年に改修工事がなされているが、この間、柱の位置は動いておらず、近い将来、その位置が変更される予定もうかがえない。そして、右アーケード柱の存在が抗告人の営業上一定の障害となる恐れがあることは否定できないことを考慮すると、抗告人が当審において主張(後記4の(二))しているとおり、最低限間口は三・六五メートル確保したいというのも無理からぬところであると考えられる。

他方、抗告人に対して、間口三・六五メートルを割り当てた場合、相手方乙山らへの割当借地間口は四・五メートルとなるが、右借地間口によれば、壁芯後退のことを考慮に入れても、従前の同相手方らの壁芯間口三・五五メートルを超える間口を確保することは優に可能であると考えられる。

以上検討の結果によれば、当事者の衡平を図る観点からみて、間口については、抗告人に対して、三・六五メートルを割り当て、これによる不均衡は奥行きの調整によるのが相当である。

3  一九頁八行目の「右申立人」から末行末尾までを次のとおりに改める。

「右(四)で認めた抗告人への借地割当面積(三九・一九平方メートル)と、前記(三)で認めた相当間口によれば、抗告人への割当地は、本決定別紙物件目録記載(二)1のとおり(間口三・六五メートル、奥行き一〇・七三メートル)となり、相手方乙山への割当地は、同目録記載(二)2のとおりその余の部分(間口四・五メートル、面積九四・六九メートル)となる。」

4  二三頁四行目冒頭から二四頁五行目末尾までを次のとおりに改める。

「抗告人は、原審において最終的に、本件土地南隣のコープ甲田との関係及びアーケード柱との関係から南側において境界からの壁芯後退が〇・五メートル必要であり、これに北側境界からの壁芯後退〇・二五メートルを取り、壁厚を〇・一五メートルとすると、従前の実効間口二・八五メートルを確保するためには借地間口として三・七五メートルが必要となる旨主張していた。

しかしながら、コープ甲田との関係で〇・五メートルの壁芯後退が必須となるとは認め難いし(第三の二の2の(四))、壁厚は抗告人の建築計画の内容に係る事柄であり、〇・一五メートルの壁厚を前提とすることが必須であるとも言い難い。しかるところ、抗告人は,当審において、抗告人が建築する店舗の間口の内側にアーケード柱が位置しないように、かつ壁厚を〇・一メートルとして、アーケード柱が壁芯部分まで来るようにコープ甲田側からの壁芯後退を〇・四メートル取ると、抗告人にとって最低限必要な間口は三・六五メートル(二・八五〔従前の実効間口〕+〇・一〔北側壁厚〕+〇・一〔南側壁厚〕+〇・二〔相手方乙山割当土地からの壁芯後退〕+〇・四〔コープ甲田側からの壁芯後退〕=三・六五)であるとして、右主張を変更するに至った。

そこで、当裁判所は、アーケード柱が抗告人の営業上一定の障害になる恐れがあることや、現在の柱の位置が近い将来変更される見込がないことも併せ考慮して、抗告人に対し、間口三・六五メートルを割り当てるものである。」

5  二四頁末行冒頭から二五頁六行目末尾までを次のとおりに改める。

「しかし、相手方乙山らにとって営業上重要と認められる西側公道に面する一階間口についてみれば、従前の相手方乙山らの壁芯間口は三・五五メートルであったのに対し、当裁判所の割当でも、これを超える壁芯間口を確保することが可能であると考えられる(前記第三の二の3の(三))。抗告人の必要間口の数値は、もとより営業政策ないし店舗としての設計内容にもよる事柄であるが、右のとおり相手方乙山に対して従前以上の間口確保が可能である以上、前記アーケード柱のことを考慮して、抗告人に、前記の間口を割り当てても、当事者間の衡平を害することにはならないというべきである。」

三  結論

以上の次第で、これと一部結論を異にする原決定を変更することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 上野 茂 裁判官 高山浩平 裁判官 長井浩一)

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